筑後川のランカーシーバス 100cm

「畏怖」・・・! 90cmを超える有明鱸は数々見てきたが、「畏怖」を感じたのは、初めてだった。
その「大きさ」、「長さ」や「重さ」に「畏怖」を感じた訳ではない。
その圧倒的な「存在感」に威圧され「畏怖」を感じた。
その威風堂々の「存在感」が怖かった・・・。

北部九州を流れる大河「筑後川」は河口から23kmの地点に筑後大堰を構え、その下流域には有明海から溯上してくる「鱸」が生息しており、それは大型であることが多い。
毎年、メーターオーバーが数本は確認できるこの「筑後川」をメインフィールドとして釣友をはじめ仲間達と通い、筑後川フィールドの解明に勤しんでいる。

そして今は現在の「筑後川」というフィールドに正面から向き合い、その自然のパズルを仲間達と解き明かすことにやりがいを見出している。

そして本日はこの筑後川フィールドの底力をまざまざと見せつけられた。
尾っぽを掴んでのランディングという荒業を見せてくれたBlog「東洋式疑似餌釣研究所」の「Megaceryle lugub」氏が一言ポツリと呟いた。
「シーラカンス・・・!」
真にそんな存在感だった。
今までも90オーバーのランカーは見てきたはずであるのだが、比較にならない位の鱗の大きさや背中や尾鰭の一部の苔生したグリーンバックはその生きてきた年輪が途轍もなく長いことを示している。 そして、その白い尾鰭は長く筑後川で生きてきたことを示している。
もしかすると、何年も有明海に下っていないのかも・・・しれない。

100cm 9.0kgの筑後川の有明鱸・・・。
もう「畏怖」の念しかない。
言葉は・・・なかった。
画像では、その風貌がスポイルされてしまうのが惜しい。

大潮から潮変りの中潮1日目。
下手な大潮を超える潮位で本日の最高潮位は520cm(三池基準)を越える大きな潮周りの満潮から下げの時合でどこにフィールドインするか・・・?迷っていた。
「中途半端だな・・・?」
そう思いつつ、車を走らせていると「ふっ」と目についたフィールド。
「最近、そう言えば入ってないな・・・?」
と思いつつ、フィールドを視察すると誰もいない。
そして引き寄せられるようにフィールドインする。
フィールドインすると「Megaceryle lugub」氏から出撃の入電が入り、こちらに向かうと言う。
フィールドを集中して観察すると、水面にはベイトの波紋はたくさん見てとれる。
そしてごく稀にだが、それを追いかけるようなライズも見てとれた。
「有明鱸の魚影は薄いが・・・居る」
潮汐の大きな満潮からの下げは激しくなる一方だったが、シンキングペンシルを「ドリフトさせたり・・・」「ターンさせたり・・・」「ただ巻きしたり・・・」「トィッチ入れたり・・・」「早巻きしたり・・・」してみるが反応が無い。
レンジを下げて重い筑後川の流れを泳ぎ切らせるために、ジグミノーを手にとる。
そんな中、ふと白色で半透明のジグミノーが目に入る。
土曜日には私事で出撃ができなかったので、ロッド・リール・フローティングベスト・ライン・ルアーと徹底的にメンテナンスし、タックルボックスの中身を「秋」仕様に入れ替えていた。
万全の態勢・・・
そしてそのシラス色のジグミノーをキャストする。
何度も何度もキャストを繰り返すが反応はない。
このルアーはこれまでも何度かバイトはあるものの今まではのらずだった。
手前のブレークの切れ目に回収気味のジグミノーが差し掛かったその時・・・
「ゴンッ・・・!」と時間が止まった。
こんなところで「根掛り」・・・?
「今まではこんなところでは・・・」と思った瞬間・・・
「グリッグリッグリッ・・・」とものすごい力で引き込みはじめた。
「PALMS SurfStar」がバットから恐ろしい角度で曲がっている。
「Twin Power Mg 4000」のドラグは唸りを上げて回転を続けており、一向におさまる気配がない。
スプールを指で押さえながらドラグを少しずつ締めるが、そんなことはお構いなし!
あっと言う間に、50mのラインが引き出された。
「おかしい・・・?」 魚種に疑念が湧く。
「こんな時期に筑後川の青物(草魚・蓮魚)か・・・?」
とも思ったが、それにしては動きがシャープなのだ。
「有明鱸ならば、とてつもなくデカイはず・・・。」
慎重にじっくり対応するも、沖目で全く動かなくなった。
「障害物に潜られたか・・・?」 ラインテンションを掛けたまま、ゆっくりとバットから曲がっている「PALMS SurfStar」で煽ると本当にゆっくりとゆっくりと数cm単位で岸の方へ動きはじめた。
そんな時に、「Megaceryle lugub」氏が到着してくれた。
そして程なくして、岸寄りで浮いてきた魚体は「アカメ」か「バラマンディ」か?と思われるような有明鱸。
「Megaceryle lugub」氏と深夜に2人して気色ばむ。
一気に「手」に「汗」がにじんできた。
本当に慎重に慎重に「Megaceryle lugub」氏が待ち構えてくれているランディングポイントへ誘導する。
ほんの数分が途轍もなく長い時間に感じる。
そしてやっと「Megaceryle lugub」氏の手が届く所まで寄せた時、ゆっくり魚は反転して向きを変え、沖へ向かおうとしていた。
そこは百戦錬磨の「Megaceryle lugub」氏だった。 咄嗟に有明鱸の尾っぽを掴んでテールランディング・・・!
「荒業・・・!」
そして見事にキャッチとなった。

しかし、このサイズになるとキャッチが本当に死闘となるため、有明鱸の消耗も半端ではない。
リリースを試みるも回復が捗らない。
この年齢である。 もしかすると、今年の産卵で力尽きるのかも・・・しれない。

と・・・してもである。
長く、この筑後川そして有明海で育まれたグリーンバック。
最期も筑後川か有明海で迎えてほしい。
10分以上もの懸命の蘇生処置に応えて、グリーンバックはヨタヨタとゆっくりと母なる筑後川へ戻っていってくれた。
「感無量・・・」
「よかった・・・」

この偉大な一本の意味はまだわからない。
この筑後川フィールドからの答えの欠片であることは間違いないだろう。
何年か経って振り返ってみて、その意味が理解できるのかもしれないし、もしかしたらそもそも意味なんかない・・・のかもしれない。
そんなこと須らくひっくるめて・・・

「答えはフィールドにしか存在しない」・・・その答えを求めて鱸を釣る。

こうした出逢いを重ねていくためにも、これからもこの筑後川フィールドにできる限り、立ち続け、佇んでいきたい。

Tackle Rod : PALMS SurfStar LightClass SGP-96L
Reel : Shimano 09 TwinPower Mg 4000 + 08TwinPower 4000S Spool PE
Line : UNITIKA Silver Thread SaltWater-PE 20Lb.(♯1.2 ) 200m
Shock Leader: Duel Sea Bass Leader 20Lbs. Fluoro Carbon
Lure : Jig Minnow/Real Method Nabura Winder WHシラス/クリアホロ 90mm 24g

筑紫次郎・・・「筑後川 鱸(シーバス) 通信」