柳井のランカーシーバス 98cm

午前4時。

真っ暗な部屋の静寂を破るように

ケタタマしいアラーム音が部屋に響いた。

開いた目とは裏腹に、頭はまだオヤスミ・・・

ボーっとそれを見つめる。

(ベットから手の届かないとこに置いてるのがミソ)

やがて決心したように立ち上がり、

そいつを頭を軽く押さえた。

部屋を覆う空気にはトゲトゲしい寒さはなく、

どちらかといえば暖かな日と言えそうだ。

「うーん、今日は割りと気温も高そうだわ。」

「でも、四時だよな?」

「てことは行かなきゃもう3時間寝れるわけで・・・。」

いつもならこのまま寝てしまう。

でも、今日は予感めいたものというか

明確な狙いがあるためか?

身を奮い立たせ、、

いそいそと昨晩準備したタックルを持ち出す。

外に出てみると風が強い。

外気温は6度だけど体感温度は明らかに低い。

まだ辺りは夜闇にしっかり囲まれていて

明かりの少ない場所に行くのはかなり心細い。

最初の一歩を踏み出せばいい。(笑)

狙いのエリアは風裏のはずなんだけど

風が強いのでここにも風が巻き込んでいる。

込み潮とは逆方向に風が吹きつけ、荒れる水面。

細かく潮目を目視できる状態ではないし、

雨後の濁りはほとんど残ってない様子で

足元の澄み潮に夜光虫がかすかに光を灯しては消えた。

一時間ほど振ってはみたものの、それはわけわかめって感じで

確信めいた攻めができないので風に負けて移動。

隣町まで走り、今度は田布施川。

潮位・流れ共にいい感じ♪

さらに風がほとんどないので潮の流れの変化も見やすい。

が、目に映る光景とは裏腹にここも無反応。

潮が満ちるに連れて柳井が気になり始めた。

二兎を追うものは一頭も得ず

という言葉がある。

今の自分がまさにそうかもしれない。

下手に動くよりもここで粘った方がいいのだろうけど

ある種自分の第六感を信じるのが僕のスタイル。

来た道を戻りると時刻は午前6時を回っていた。

辺りがどんどん白け始める。

いくら隣町とはいえ、移動した分振る時間は削られ

朝はすぐそこまで来ているようだった。

車から飛び出し、ウェーダーでポイントまで走る。

畑からみたら変態でしかないだろう。

ま、ここで釣りしてる時点で一般の人からは変態扱いだと思う。

ここは普段はベイトが絡まないと魚の気配すらない場所。

雨後の数日はなぜかフッコが着く。

ここでブラックライド98Mは不向き。

操作性とゲーム性を上げる意味でタックルをライトにした。

潮位的にはまさにバッチリ。

気になるのは光量。

タイミング的に入れたいルアーは

アドリブ135やレアフォース。

ただ、この二つはまだこの潮位だと着水点で死んでしまう。

レンジの関係で悟空110をセレクトした。

一投で決める!

そんな想いで放った悟空110はベストコースに。

予感めくような一投目。

セルテを3巻きばかししたところで

デュ・・・

頭で考えるより先に体が反射的にフッキングを入れる。

ズバババ・・・

ズババババ・・・

いやいや、場が荒れる・・・(汗)

てか、デカそうじゃん。

80は軽くいったね!

それは丸呑みされた時に多い垂直の連続エラ洗いって感じ。

「丸呑み?」

「そりゃやばい!ラインシステムはファイヤーライン8 lbにリーダー 2.5号だもん。」

どうランディングする?

ヘドロに点在するカキの地質のため、ズリ上げ=ラインブレイク。

やんわりふんわりファイトをして

水深のある下流に誘導して寄せにかかる。

「うーん、トルキィー!」

途中フックが一本飛ばされ、

テンションが一瞬抜けた。

ライン強度を考えて丁寧に寄せてはいるものの、

なかなか顔をみせないシーバス。

「こちらから迫ろうか?」

下流に出されたラインを思うとそんな考えもよぎった。

でも、追えば余計逃げるかもしれない。シーバスが頭の向きを変えたところを見計らい、

こちらに主導権を取って一気に寄せる。一度こちらに顔を覗かせ、また走る。

その姿は今までに見たことのない背ッパリだった。

二度目の寄せで下顎をガッチリ掴んだ。

「獲った!」

いったかメーター?

どこかで見た様なセッパりな風貌に斑点。

とりあえずデカイ・・・。

今が時合い真っ只中。

ストリンガー持ってきてねーし、

オーシャングリップに繋いどくと飛ばして逃げる・・・。

とりあえず振るのは諦め、

オーシャングリップでウエイトを測る。

メモリ振り切ってるし・・・。

釣友にモーニングコール♪

「マジで!?行ってるとは思ったけど・・・    じゃあ、ちょっくら見に行くわ。」

てことで、わざわざ上関から柳井へ。

釣具屋で秤まで買ってきてくれた釣友。

マジでありがとう。

こんな時に自分の事のように

喜んでくれる友人は宝物である。

君が今日遅番でなかったら

たぶん普通に

「オーシャン振り切ってたんで7kgは越えてましたね」

でリリースしてたよ。

叉長94cm(全長98cm)

8.2kgのタイリクスズキ。

あのMリグさんのアカメのような魚体の画像が

頭に焼き付いていたためにあまり実感はわかなかったが

自身としては初の7kg越えであり、初の95cmUP。

まさにいつか自分も触れたいと思っていた憧れの魚。

完全なる捕食スポットには入れたものの、

ここにもこんな魚が入ってくることがあるとは・・・。

第一、昨年ここ柳井でタイリクには一匹も出会っていない。

ヒットルアーはこの悟空。

昨夜タックル整理していて二軍?三軍?

から引き上げてきたばかり。

買ったのは高校時代だけどほとんど使わず眠っていたあの頃は使い方が理解できなかったルアーも

昨夜は魅力的に感じられた。

リリースが遅くなってごめんね。

元気良く泳ぎ出していく姿を見送り、

再会を密かに願った。

ROD:乱&銃 好他異流76L(カスタムファクトリー)
REEL:セルテート2500Rーカスタム(ダイワ)
LINE:ファイヤーライン8 lb(バークレー)×トヨフロン2.5号(TORAY)
HIT LURE:悟空110(ウェーバー)

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※レポート 内山 拓樹/R&Gシーバス